カレェちゃん

ヤンゴンにいたカレェちゃんです。最近は働いています。賃金労働に反対している。

『タメイン問題』展覧会に行きました。

こんにちは、カレェちゃんです。

 

5月11日〜19日まで開催された”Skirting the Issue/ထဘီကိစၥ”(タメイン問題)という展覧会にいって来ました。

場所はダウンタウン37番通りにあるRiver Galleryです。

 

Htein Lin/ティンリンさんというアーティストがこのプロジェクトを率いて参加者を募り作品を制作しました。

 

作品には寄付されたタメイン(ミャンマー人女性が身につけている巻きスカート)が使用されています。

f:id:kare_chang:20190520140802j:image参考に私が持っているモン族のタメイン。

 

タイトルにもなっているこのタメインに関する問題が一連の作品のテーマになっています。

 

ミャンマーでは上座部仏教の影響で女性の下半身を覆う衣服、つまりタメインは「穢れたもの」と広く考えられており、男性の衣服と一緒に洗濯をすればその男性の「徳(霊的な力)」が減るとされ、女性のタメインは他の衣服と分けて洗濯しなければいけません。

また、女性のタメインの下を通ると「徳」が減るとも言われ、必ずどの衣服よりも下に干す、または家の裏に干すことなどが強いられてきました。

 

私の実体験として、部屋の結構高い位置に物干し紐が取り付けられており、そこにタメインを干していた時に大学の先生(女性)が部屋にいらっしゃると「うわ…」という顔をして絶対その下には近づきませんでした。その反応を見て、あぁそういえばそんな考えがミャンマーにはあったなと思い出したのでした。

 

 

さて、カレェちゃんが最終日の19日にギャラリーに到着するとカラフルな作品にたちまち目が奪われました。

その一部をご紹介します。

f:id:kare_chang:20190519191507j:image「仏様は男であったから、人間も女のタメインと男のパソーを一緒に洗わない。 —―エーエートェー」

※パソーは男性用巻きスカートのこと。


f:id:kare_chang:20190519191525j:image「男性の徳というのはその人の器量と体力にのみ関係するのであり、パソーやタメインとは関係がない。 ――サンダーウィン」


f:id:kare_chang:20190519191459j:image近くで見てみると、絵の具で細かく元のタメインの柄を際立たせているのが分かります。


f:id:kare_chang:20190519191528j:image「とても古い価値観を持つ祖母たちと住んでいたから、タメインに関して教え込まれたこともあるけれど、『徳が減る』というのは受け入れられなかった。タメインは布切れ一枚でしかない。――ニーヌェミン」


f:id:kare_chang:20190519191520j:image「人の道徳というのはタメインに依るものではない。私が洗濯する時はすべて一緒に洗う。 ――ソーエーテッ」

 

多くの作品のメッセージに共通する点は「タメインを他の衣服と洗うかどうか」「布切れ一枚で人の徳は変わらない」という点でした。

そして私が驚いたのは「自分はタメインと他の衣類を分けない」と宣言している作品がいくつもあったことです。

未だにタブー視されている行為に不敵にNOと言い切る女性たちの勇敢さと意志の強さに、胸がドキッとするような驚きと頭を下げたくなる程の尊敬の念を持たずにはいられませんでした。

 

そんな女性たちの大胆さを表すかのように、ブースを進むと部屋の真ん中に大きくたたずむタメインで作った巨大な女性の顔が目に飛び込んできます。
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裏へ回ると顔の中に入ることができる入口があります。
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そこには「迷信を信じないなら入ってみてください」という文字が。
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中へ入ると、なんだかワクワクするような小さな空間でした。中にはテレビが設置されていて、作品のモデルの女性たちへのインタビューを見ることができました。

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ミャンマーに深く根付く迷信に果敢に挑むHtein Linさんたちの作品に、カレェちゃんも勇気付けられました。

 

 

 

カレェちゃんはギャラリーに行く前日に予習を兼ねて、Myanmar TimesのFacebookページにある今回の展覧会についての動画を観ていました。

そのページのコメント欄には賛否両論というよりもほぼ批判、それも結構酷い言葉で作品やアーティストを罵倒する投稿が多く見受けられました。

 

日本でもこの手の議論でよく見る「伝統を壊すな」という声やミソジニー大爆発!みたいなコメントにいいねがついており、問題の根深さを感じました。セクシズムは論外として、伝統も大切ですがそれがなぜ伝統になったのかを振り返れば『伝統=正しい』という思考停止状態から脱出できると思います。

 

また

「(Htein Linさんや企画に賛成している人は)ただの布だというのなら頭の上にタメインを載せられるのか」「タメインを枕にして寝られるか」

というようなコメントが複数見受けられました。その行為がミャンマー人にとってどれほど怖いことかこちらにも伝わってきました。

そして、実はその考えはHtein Linさんたちが今回ミャンマー人男性に向けたメッセージにも共通しています。

「一部の男性が時代遅れの迷信を知性で否定したとして、あの巨大な顔の中、沢山のタメインに囲まれて心から居心地が良いと言えるか?」

それを今回の展示で考えてもらいたい、という挑戦的な意図が、あの巨大な顔の作品にはあります。その意図を男性たちが汲み取ることができれば「タメイン問題」の議論が一層深まっていくと思います。

 

 

今回の記事を書くにあたって、会場で頂いた紙とMyanmar Timesの動画と記事を参考にしました。

動画:ကြဲျပားတဲ့ယူဆခ်က္ေတြေပၚထြက္လာတဲ့ ပန္းခ်ီထိန္လင္းရဲ႕ ထမီကိစၥ။ - YouTube

記事:Myanmar Times  ”Artist Htein Lin takes aim at a men’s custom” https://www.mmtimes.com/news/artist-htein-lin-takes-aim-mens-custom.html

 

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